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2014年10月24日金曜日

第27回汎太平洋不動産鑑定士・カウンセラー会議(PPC)開催報告




第27回汎太平洋不動産鑑定士・カウンセラー(PPC)会議が、平成26年9月21日(日)~24日(水)までシンガポールで開催されました。

本会から吉村理事長を団長・磯部裕幸国際委員長を副団長として、11名(JAREA重複参加者を除く)の方が参加しました。


平成26年9月22日(月)の午前中に開会式と基調講演が開催されました。
開会式で挨拶するシンガポール会長



挨拶する吉村理事長

 

開会式では、各団体の団長の挨拶が行われ、 
当会の吉村理事長も本会の紹介、Red Bookの翻訳出版等
の活動報告をしました。
 
 
吉村理事長の挨拶はこちら 
 
 
 
 

スピーチする村木常務理事


 
 
 
平成26年9月22日(月)の午後2時から
開催された全体会議では、
当会のスピーカーとして
村木信爾常務理事が「日本における
ヘルスケアアセッ トの評価の特徴と
そのグローバルスタンダードとの整合
性について」と題して、スピーチしまし
た。
 
 
 
 
 

スピーカーへ記念品を贈呈する磯部国際委員長


同日の午後4時から開催されたワークショップB「Valuaion and The Profession;評価と専門職業家」のセッションで座長として登壇しました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今回のPPC会議の参加に際し、本会独自の企画として、①CBREシンガポール事務所で
シンガポールの不動産市況について情報収集、②マリーナベイサンズ見学などを実施
しました。
 
詳細は参加者の菊池国際委員会副委員長の報告のとおりです。
 
 
菊池国際委員会副委員長の報告
 
JAREC独自プログラム
 
 
 CBREによるマーケット概況のプレゼン
 
 マリーナベイサンズ スタディーツアー(エコへの取り組み含め)

 
 
 

Ⅰ CBREによるマーケット概況のプレゼン
 
   CBREシンガポールオフィスにて、オフィスセクターおよびレジデンシャルセクター
  のマーケット概況のプレゼンを聞いた。
 
1.オフィスマーケット概況
シンガポールは、面積わずか716 km2である。そのうちで、下図黄色線内が
Central Region(中心区域)である。黄色四角拡大図(図2)内にビジネスセンター
地域(CBD)が集まるが、シンガポールの特徴として、周辺に一体開発されたビジネス
パーク等が存することである。中でも島の東部チャンギ空港近くのTampines(タンパン
ズ)が、近年多くの金融機関がバックオフィスを移し注目されている。
 


図1

 
 
図1の黄色四角部分の拡大図が、図2になるが、この中に10のサブマーケットが存する。
 
Core CBD(コアビジネスセンター地域):以下4つのサブマーケット
Raffles Place(ラッフルズプレイス)
Shenton Way(シェントンウェイ)
New Downtown (Marina South)(ニューダウンタウン(マリーナサウス))
City Hall / Marina Centre(シティホール/マリーナセンター)
 
Fringe CBD(外郭ビジネスセンター地域):
Thomson Rd. / Novena(トムソンロード/ノヴェナ)
Orchard Rd. / Scots Rd. / Dhoby Ghaut(オーチャードロード/スコッツロード/ドービーゴート)
Beach Rd. / Middle Rd.(ビーチロード/ミドルロード)
Havelock Rd. / River Valley Rd.(ハブロックロード/リバーバレーロード)
Chinatown(チャイナタウン)
Tanjong Pagar Rd.(タンジョンパガードロード)
 
図2:ビジネス中心地域のサブマーケット
 
 

シンガポールは、国力を保つために、常に様々な政策的意図が作用する。
オフィスマーケットに関して言えば、アジアのビジネスハブの地位を守るために、
常に香港が意識されているようである。マルチナショナル企業を誘致するために、
オフィスコスト(賃料ほか)が香港より割安であることを目指しているそうである。
 
実際、図3のように、アジアパシフィック地域内のプライムオフィスの占有コストは、
香港、東京丸の内と比しても割安となっている。
 

 図3:アジアパシフィック各都市のプライムオフィス占有コストの比較
 
 

過去4四半期累計の需要net absorption)は図4のとおりとなっており、2010年第2四半期
来、概ね10年間の平均需要(約14百万スクエアフィート:約130万㎡、39万坪)を上回って
いる。
 
需要が旺盛な業種等としては、エネルギー関連、一次産品、法律事務所等専門業、海運業、
保険業、その他新規本社開設である。そこそこの需要がある業種等としては、IT関連、
アジアパシフィック地域の金融機関、また需要が冷え込んでいるのは、欧米の金融機関であ
る。
 
 
図4:オフィス需要
 
 
図5:オフィス供給


供給は図5のとおりで、確認されている新規開発を合計すると、2014年下半期から2017年に
かけて合計778万スクエアフィート(訳72万㎡/22万坪)となっている。最も供給が多いのは
2016年で、コアCBD内のMarina Ones(約1.9百万sq.ft./約17万㎡/約5.3万坪、図6の⑧)
や、外郭CBD内のMaple Tree Business City2期(約1.2百万sq.ft./約11万㎡/約3.4万坪) 
などの竣工が予定されている。
図6および図7に近時および今後の、主な開発案件が示されている。
 
図6:CBD / ビジネス中心地域内の主な開発案件(2013-2017



図7:ビジネスパーク等の開発案件


 
 
  図8:AクラスおよびBクラスのオフィスの賃料予測

  
 
 
 
  



図8のとおり、2014年第2四半期現在のAクラスオフィス賃料はS$10.60/sq.ft.(32,000/)となっている。その後上昇傾向で、2015年にはS$13.00/sq.ft.(約39,000/坪)と予測されている。


図9:住宅種別のピラミッド


 
 図10:住宅地域の色分け

 


 
  図10の、オレンジの地域が高級中心地住宅地域、グレーが標準中心住宅地域、さらに白が
  郊外地域となっている。オレンジの地域の中でも、オーチャードロード周辺、マリーナ周辺、
  セントーサ島が特にプライムエリアのようだ。
 
 


  11:需給の状態

 



 

  需給の四半期ごとの推移は図11のとおりで、濃い緑色部分が新規開発されて売却済みの住
  戸、黄緑色の部分が新規開発されたものの未売却の住戸である。2014年の売却総戸数は
   8,00010,000戸と予測されており、2013年の約15,000戸より大幅に下落の見込みである。
  シンガポール政府の住宅政策は、シンガポール市民の持家率ができるだけ高くなるよう、
  良質な住目的の住宅が健全な価格で供給されるようにすることにある。従って、2戸め
  以降など投機目的と考えられる取得や、外国人による取得には、低いLTVの上限など様々な
  規制がかかる。
  それでも、中国、インドネシア、マレーシアなどの外国人が投資目的で高値で購入することも
  影響し、価格が上昇しすぎであると考えられており、価格を抑制する施策が継続して打たれて 
  いる(図12)。若干価格下落の兆しが見えてきているものの、まだ標準世帯向けには高いよ
  うで、建築中・計画中案件も含めて在庫は高い水準にあるそうだ(2013年末現在、29,482
  戸)。一方、施策のおかげで、上記3国の外国人による取得は激減している(図13)。



   図:13  外国人による購入状況

 
 



   新築の住宅価格の推移は図14のとおりであり、カテゴリーごとの2014年第1四半期現在の
面積単価は以下のとおりである。

 

ラグジュアリー(緑):約S$ 2,900/sq.ft.(約870万円/坪)

プライム(水色):約S$ 1,800/sq.ft.(約540万円/坪)

ダウンタウン中心地域(紫):約S$ 2,300/sq.ft.(約690万円/坪)

フリーホールド総平均(オレンジ):約S$ 1,400/sq.ft.(約420万円/坪)

99年リースホールド総平均(グレー):約S$ 1,000/sq.ft.(約300万円/坪)
 
 
14:新築の住宅価格




   
   2014年の年間予測であるが、価格指数総平均は4%~6%下落(2013年は1.1%上昇、以下
   同様)、賃料は4%~6%下落(0.9%上昇)、賃料は4%~6%下落(0.9%上昇)、ラグジ
     ュアリータイプの価格は5%~10%下落(1.8%下落)、新築住宅価格は5%~8%下落

    15昇)となっている。

 
 
 
 
 マリーナベイサンズ スタディーツアー
総合型リゾート(IR)の代表ともいえる、マリーナベイサンズを管理運営会社の案内
で見学した。ホテルで2番目に広いプレジデンシャルスイート(509㎡)の客室をはじ
め、スカイパーク、ハーブガーデン、ショッピングモール、カジノ等をご案内頂い
た。
 
ここでは、その際お聞きしたエコへの取り組みの説明および補足で頂いた資料の中身
ご紹介したい。
 
MICE (Meeting, Incentive, Convention & Event) 施設としては、東南アジアで初めてISO 20121 (持続可能なイベント運営のためのマネジメントシステム規格)を取得。  20142
 
シンガポールのBCA (Building Construction Authority) による認証制度であるグリーンマークで、ゴールドマークを取得(シンガポールで最大規模)。  2012
 
20125月よりEarthCheckに参加。
 
ASTM (American Society for Testing and Material) スタンダードのレベル1の認証を取得。  20137
 
エコへの取り組みは、以下の4つの優先事項から成り立っている。
1)  グリーンビルディング
2)  環境に配慮した施設運営
3)  環境に配慮した会議運営の補助
4)  サステナビリティに関する教育と奉仕活動
 
エレベーターに電力再生システムを搭載し、約40%の省エネに貢献。
36,013個の電球を省エネタイプとしており、年間622kwhの節約に貢献。
 
 
・シンガポールのPUB (Public Utilities Board) より、水資源効率化ビルに認定されており、461PUB認定蛇口を使用し、年間6,700㎥の節水に貢献。その他、水に関しては、共用エリア内の水道に特殊な蛇口を使い、年間3.5億リットル(シンガポールの標準世帯800戸分)の節水に貢献。また、アートサイエンスミュージアム(写真)の構造は、雨水を集めてトイレの水洗用水にまわすシステムとなっている。
 




 
インテリジェント・ビル管理システムにより、9万のコントロールポイントを通じ、照明、空調、水供給について自動制御。客室においても、空き室のカーテンを自動で閉めるプログラム、外出の際に空調温度を数度上げるエコボタンの設置、一定時間バルコニーの窓を開けると自動で空調が切れるシステムなど、様々な省エネの工夫がされている。
 
建築時にも、木材、金属、土砂などのリサイクル、再利用に努め、塗料も環境に配慮したものを使用し、廃棄物の分別等にも注意を払った。
 
会議場として利用される場合、グリーンミーティングコンセルジュを置き、会議主催者に対し、あらゆる面でサステナブルな会議運営を補助しており、会議後に使用した水量やエネルギー量の数値を含むレポートの提供も行っている。
 
全従業員への教育・啓蒙活動として、様々なキャンペーンを随時企画実行するとともに、テナントや取引業者と一体となった啓蒙活動を行っている。例えばアースアワーへの参加による消灯や、独自の取り組みとして第一火曜日の1時間消灯およびバックヤードの空調1度引き上げ等である。
 
ホテル中庭にハーブガーデンを設け、環境に配慮したシステムで育成し、レストランで使用する全てのハーブを賄う。
 
敷地内に植栽を多く施す。12,400㎡のスカイパークはグリーンオアシスとして、250の樹木、650のプラントが植栽されており、中には8mにおよぶ木もある。
 
以上、環境ビル先進国であるシンガポールの側面を実感できるツアーとなった。